渡航を通して、エストニアという国を訪れる機会があったことは非常に幸運であった。日本と比べると規模が小さい国だが、だからこその利点も多くあり自分の考えに渡航前後で変化があった。渡航ではIT教育の中でエストニアの初等教育を日本に活用できる点はあるのかということ、エストニアの自然を重んじる文化に注目して行動した。
実際に学んだことの1つとして、エストニア人にとってITは教育という括りではなく「日常」に近いのではないかということである。小学校の算数の授業ではiPadで問題を解き順位をつけながら授業が円滑に行われ、選挙期間はオンライン上での投票が半数を超えていることなど、ITというものは日常の中に組み込まれており、歴史的にも文化の一部であった。日本のIT教育の促進にはIT教育として括り教育の中に器械的に組み込むのではなく、日常として浸透させていく重要性を感じた。
その一方で宿題は紙であったり実験はパソコンだが、結果は紙で書いたりとアナログな面もあった。また、ウクライナから来た子供たちはエストニア語が分からず授業から置いていかれてしまっていたという点も見受けられ、社会情勢を含めて深めていきたい観点が増えた視野の広がる経験となった。
1人1台タブレットを使って行われていた小学校の授業の様子。
2つ目は自然と非常に密接であった点である。体育館や教室には必ずと言ってよいほど緑があり、知人曰く、週末には家族で森や湿地に行くことが良いとされていることを知った。実際にロッジに泊まり自然に1日中触れたことでエストニア人が自然をより日常的に重んじる感覚を知れた気がした。ロッジでは日本であまり感じることのない静かさや人間がコントロール出来ない自然の壮大さに圧倒され、その瞬間を生きるということを経験できた様に思う。
静けさと澄んだ空気が印象的だったロッジからの景色。
このハイテクとアナログの絶妙なバランスは一見、真逆に見えるものを文化の中で融合している点が非常に魅力的であった。短期滞在では分からない内容も深めたくなり、もう一度渡航したいと思える経験が出来た。