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電子国家の自然

執筆者の写真: Momoka NomuraMomoka Nomura

短い滞在期間であったが、実際に現地に行くことで得られる情報の量と種類に驚かされた。コロナ禍の大学生活で常にインターネットから情報を集めてきた私にとって、その土地の空気に触れその土地の人の声を聞くというのは、とても新鮮で心躍る経験であった。エストニアは人口およそ130万という小さな国でありながら、「電子国家」として注目されている。デジタル化が進む中で、人と人、人と自然とのつながりは失われないのか、そのような事を考えながらプログラムに参加した。


どこでもWi-Fiが繋がるという噂を聞いて訪れたエストニアであったが、「なんでもデジタル化」されているわけではない。ホビースクールや博物館、児童文学センターでは、デジタル端末があえて排除され、アナログな道具を使って自由な発想を基に作品が創り出されているのが印象的であった。一方で、電子国民制度や選挙など行政サービスの多くはオンライン化されていて、面倒な手続きが無く、親しみやすさを感じた。このことから、エストニアのデジタル化は目に見える部分よりも見えない部分で活用されていて、人と人を切り離すのではなく、むしろ積極的に関わることを促しているのではないかと感じた。



自然との関わり方について印象的であったのは、多くの人が自然を大切にしている、または信仰心を持っているということだ。皆が環境保護を意識している訳ではないし、多くの人が生活の基盤を都市部に置いている。しかし、自然の話をすると誇らしげに語ってくれる姿を見て、言葉や行動では表しきれない、何か特別な感情を抱いていることが窺えた。自然といえば、森のサウナでの経験は忘れられないものとなった。スチームサウナの体験中に火が消えていたり、スモークサウナの見学中にニット帽を煤で汚したりと、小さなハプニングのおかげで、もう一度訪れてリベンジしたいという気持ちも強くなった。それと同時に、日本にもまだ知らない自然が豊かな場所が沢山あるのだろうと気付かされ、もう一度自分の国の自然についても見つめ直してみたいと思った。


写真:ハイキングコースからロッジまでの道。誰もいないまっすぐな道が印象的。

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